僕のお父さんは光のお父さんではなかったけどゾンビと戦うお父さんだった ②
前回↓
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前回までのあらすじを大雑把にお話ししますと、今は亡き僕のお父さんがwiiという家庭用ゲーム機のゲームソフト「バイオハザード4」というゲームをやりたいと言い出した。って感じのお話でした。
wiiのバイオハザードは体力を使う
wiiという家庭用ゲーム機は当時としては斬新でワイヤレスリモコンをテレビに向け、テレビ上部にセットしたセンサーがそのリモコンの動きや傾きを読み取るというものでした。
「wii版バイオハザード4」ではwiiリモコンをテレビに向けると小さな丸いポインタがリモコンの動きに合わせてテレビの画面上を動きます。
それを照準としてぞろぞろと出てくるゾンビたちを拳銃で狙い撃つのです。
操作に慣れていると腕を下ろしてリラックスした状態でwiiリモコンをテレビ画面に向け、手首だけを回して操作できるのですが、父はwiiリモコンでの操作は初めてでしたので、ガンマンよろしく腕をしっかりテレビ画面にしっかり伸ばして向け、照準をゾンビに合わせてバンバン撃ちまくっていました。(お父さんかっこええわ~)
それ以外にもゲームの操作としてゾンビにつかまるとゾンビを振り払うためにリモコンを左右に素早く振らなくてはならないなど、操作の加減が分からない父はリモコンをぶんぶん振り回していました。
「こりゃあ、すぐに投げ出すだろうな」内心そう思いながら後ろで見ていると、予想通り30分もするとリモコンを振り回し過ぎてヘロヘロになった父は
「疲れた。もう、ええわ」
と、wiiリモコンを僕に渡してそそくさと寝る準備に取り掛かりました。
(※実際にはコントローラーを投げたりはしません)
ちょっとした気まぐれ。父が金輪際このゲームには触れることは無いだろうと思っていたのですが、何日か経ってから父が
「またあのゲームやってみたいんやけど」
と言ってきたので、僕はちょっと驚きつつもwiiの起動方法(と言ってもボタン押すだけ)やセーブデータのロードの方法などを教えてあげました。
最初の頃は僕がいないとゲームを始めることが出来ないようでしたが、何回か教えてあげると、僕がいなくてもゲームを始められるようになり、それ以降ゲームをする父の姿をちょくちょく見かけるようになりました。
ゾンビにやられて悔しかったのかどうか今となっては父の気持ちは分かりませんが、よくプレイをしながら「えーい、くそが!」とよく言っていたのは覚えています。
弾が無い
最初のころはほんの少しの時間しかやりませんでしたが、「バイオハザード4」のプレイ時間が日に日に長くなっていく父。
たまに父がプレイしているところを後ろから見てると面白いようなもどかしいようなそんな気持ちになっていたのを覚えています。(ヘタすぎて)
このゲームはゾンビにかみつかれると徐々に体力ゲージが減っていって、体力ゲージがゼロになるとゲームオーバーになります。
たくさんのゾンビに囲まれて攻撃を受けると即座にゲームオーバーになってしまうので適度な間合いを取る必要があります。
基本的にはゾンビは足が遅いのでプレイヤーは操作するキャラクターを走らせて逃げたりできるのですが走ることは前の方向にしか走れません。
それと拳銃を撃つときは立ち止まった状態でしか撃てないのです。
立ち止まってゾンビをバンバン撃って倒していくのですが、強力な武器で頭を撃ち抜いたり、足を撃ってゾンビを転ばせたりしない限りはゾンビたちはどんどん迫ってきます。
そんな時は後ろに後退したいのですが、後ずさりする場合はジリジリとゆっくりとしか後退できません。
後ずさりする速度はゾンビが歩く速度よりも遅いのですぐつかまってしまいます。
こんな時は180度素早く方向転換する操作方法があるのですが慣れない父はゾンビが迫ってきてパニックになるとその操作が出来ません。
それと「バイオハザード4」では拳銃の弾を無限に撃てるわけではなく、フィールドに落ちている弾を拾ったりして弾を補給していかないと弾切れになるので、効率よく敵を倒す必要にも迫られます。
狙いが甘く、ゾンビになかなか弾が当たらないとすぐに弾切れになってしまうのです。
弾切れになると拳銃からナイフに持ち替えて戦うことも出来ます。
ナイフは拳銃と違い使用回数に制限はありませんがゾンビにダメージを与えるためにはゾンビのすぐそばまで近づかないと攻撃があたらないうえに与えるダメージも少ないのです。
ゾンビのすぐそばまで近づくなんて自殺行為のようなもので、すぐにゾンビにつかまってゲームオーバーになってしまいます。よっぽど操作に熟達したプレイヤーでないとナイフでの攻撃は難しいのです。
父はゾンビが少ないときは比較的余裕なのですがゾンビが増えてくるとパニックになり弾がゾンビにあたらなくなる上に乱れ撃ちになって、結果弾が無くなってゲームオーバーになってしまうといった感じでした。
よく父がゲームをしながら「ああっ・・・弾がない・・・弾・・・」と悲壮感たっぷりにつぶやいていたことを覚えています。
優勢か劣勢かはゲーム画面を見なくても分かる
さすがに立ちっぱなしでゲームをプレイし続けるのは疲れるお父さん。
椅子に座ってプレイしたいのですが我が家で適当な椅子はコロ付きのものしかありませんでした。
まあ、これでいいやとその椅子に座ってゲームをするのですが脚にコロが付いているため安定しません。
本来、ゲームをするのに足をうごかす必要は無いのですがゲームに夢中になってくるとどうやら足も連動して動いてしまうようで、ゲームをしながら部屋の中を椅子に座ったままいったり来たりします。
見ているとゾンビが少なめで気持ち的に余裕があるときは攻めの姿勢でガンガン前へ出ていきます。(お父さん、テレビに近い近い)
ところがゾンビがたくさん出てきて劣勢になってくると気圧されるのかどんどんテレビから離れていきます。(おー、遠ざかった遠ざかった。このままだと後ろの壁にぶつかりそう・・・)
まるでゲームの中のキャラクターとシンクロしているかのような動きで後ろに後ずさっていくお父さん。
ですので遠くからでも父が善戦しているか苦戦しているかは父が座っている椅子とテレビの位置関係でよくわかるのです。
完全に父の専用機となったwii
いつしか家庭内でのwiiブームも去り、次第にみんなwiiで遊ばなくなりました。
父は相変わらずバイオハザード4でちょこちょこ遊んでいましたがだんだんプレイ時間が長くなりリビングのテレビを占拠するようになります。
普段リビングのテレビは家事仕事が終わった母が主に見ています。
母は父がリビングでゲームをしている間は父の部屋に行って父の部屋のテレビを見ます。
そして父がゲームを終え、部屋に戻って寝る準備をしだすとリビングに行ってテレビの続きを見るといった感じでしたが、どうもその理不尽さに気が付いたらしく父にゲームを自室でするように命じ、父はそれに従いました。
僕がゲーム機を父の部屋のテレビに接続しなおしてからは、父は誰にも気兼ねなく自室で思う存分ゲームを楽しむようになったのです。
結構長い時間集中してやっているようで、
「昨日、夢の中ですっごい数のゾンビに襲われて思わず飛び起きた」
とか
「なんか手首が痛いんやけどなんでやろ?」(お父さんそれwiiリモコンの振りすぎです。)
とか言い出して、母と妹からお父さん、ゲームやりすぎじゃないの?と呆れられていたものです。
どうしてもクリアできないときの父の攻略法
自室にゲーム機を引き込んだことでますます「バイオハザード4」に夢中になる父。
しかし、やはりゲームに不慣れな点はいなめず、ゲームオーバーになることもしょっちゅうで何度やってもクリアできない箇所が中盤以降出てきます。
そんなどうしようもなく行き詰った父がとった行動はというと、
「ちょっと教えてほしいところがあるんやけど・・・」
と僕を呼びに来ます。
この時僕は既に「バイオハザード4」はノーマルモードはもちろんのこと、それよりも難しい難易度のプロフェッショナルモードもクリアしていました。
ですのでゲーム内での立ち回り方やどうすればクリアできるかはだいたいわかりますので父にやり方を教えてあげます。
それでもモタモタと操作のおぼつかない父は何度もゲームオーバーになってしまいます。
どうしてもクリアできない・・・そこで父がいつもとる最終手段があります。
「お前もたまにはやってみたくならんか?ちょっとだけやってみろ」
と、コントローラーを僕に差し出すのです。
決して言葉に出して「クリアできないから代わりにやってくれ」とは言わず、楽しいからやってごらん的なスタンスで、しかも上から目線で既に最高難易度のプロフェッショナルモードをクリアした僕にコントローラーを差し出してくるのです。
「そうだね、じゃあちょっとやらせてもらおうかな。その前に念のためセーブしとくね」
そう言って難なくクリアした後、リセットボタンを押してクリア前の状態に戻してから父の部屋を後にします。
「やっぱり自分の力でクリアしないと面白くないでしょ?」
僕がそう言ったときの父の表情がいたずらを見抜かれて残念がっている子供のようで可笑しくてたまらなかったのを覚えています。
次回、僕のお父さんは光のお父さんではなかったけどゾンビと戦うお父さんだった③
「ノーマルモードクリアは単なる序章に過ぎなかった」に続きます。
多分、次で終わりです。
次回
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