CLIP STUDIOと液晶タブレット買ったけど使いこなせるのかこれ

Yosihino_Kimiharu 略してYOKIです。デジタルで絵を描いてみようと思います。

カップヌードルCM 「魔女の宅急便 17歳のキキ」を見て思った。3つの「ずるい!」


カップヌードルCM 「HUNGRY DAYS 魔女の宅急便 篇」 30秒

 カップヌードルのCMで「もし魔女の宅急便のキキが17歳の女子高生だったら?」というCMを見ました。

僕がこのCMを見て真っ先に思ったのが「ずるい!」ということです。いい意味でも、悪い意味でも。(※以下の文章はあくまでも僕の個人的な見解です)

其の一、ノイズ戦略を使った全年齢ターゲットがずるい!

1989年に宮崎駿監督によってアニメ映画化、劇場公開された後に、金曜ロードショーなどで何度もテレビ放映されたアニメ映画で日本人なら誰でも知ってると思われる「魔女の宅急便」。

そのヒロインである魔女のキキが17歳の女子高生になったら・・・という設定で、主に若者をメインターゲットにしているCMとの印象を受けますが、実はそうではありません。

そこには巧みな「ノイズ戦略」によって全年齢を対象としたマーケティングがなされているのです。(※あくまで個人の見解です)

ノイズ戦略とは

ノイズ戦略は今調べましたら一般的にはノイズ・マーケティングというらしいです。

とてもとてもざっくりと言いますとネガティブな情報を利用して注意を引く手法だと思われます。

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このCMのどこにネガティブな要素があるのか?

かわいらしい女子高生が好きな男の子に告白するというキラキラした青春のワンシーンを切り取った素晴らしい映像です。

 

ただの女子高生ならこれではなしは終わりですが、このCMのベースの設定には「魔女の宅急便」というものがあります。

 

魔女の宅急便」には児童文学としての原作が元々はありますが、「魔女の宅急便」と言われて思い浮かべるのはやはり「ジブリ作品の魔女の宅急便」ではないでしょうか?

多くの日本人にとって

魔女のキキ = 宮崎駿の描く魔女のキキ

と言っても過言ではないと思います。

「17歳のキキ」を描くにあたってジブリ作品のテイストを色濃く反映させた「17歳のキキ」のキャラクターデザインはいくらでもやりようがあるはずなのに、このCMでは全くちがうテイストでのキャラクターデザインになっています。

このCMでキャラクターデザインを担当されたのは窪之内英策さんで、窪之内英策さんの描く「17歳のキキ」は少女と大人の狭間にあるキキが見事に描かれていて素晴らしいことこの上ないのです。

 

窪之内英策

代表作「ツルモク独身寮」「ショコラ」は翻訳出版のみならず、実写化やドラマ化され、国内外でも広く展開された。現在はイラスト制作を中心に活動中。色鉛筆やマーカーを用いて描き出す、美麗で生き生きとしたキャラクターたちは年齢問わず多くのファンを魅了し、特に若い女性からの絶大な支持を得ている。

日清カップヌードル特設サイトより

 

実に素晴らしいキャラクターデザインの「17歳のキキ」なのですが、これまでさんざん「ジブリ映画の魔女の宅急便」を見てきた側としてはどうしても「違和感」(ネガティブな要素)を感じます。

 

「これじゃない」

「なんかちがう」

 

この「違和感」こそがノイズになり、ノイズは摩擦になり人々の心にフックしていくのです。

そしてこの「違和感」のつけ方に「ずるい!」を感じるのです。

魔女の宅急便の魔法使いのキキは角野栄子さんによる原作ありきのもので宮崎駿監督がいちから考え出したオリジナルキャラクターではありませんから原作者の角野栄子さんの許可さえあればこういう描き方をしても何ら問題はありませんし、窪之内英策さんの描く「17歳のキキ」が素晴らしくて本来なら文句のつけようがないところです

しかし日本国中大人から子供まですべての世代に愛されてきた魔女の宅急便」を全く別のテイストで描くことにより若者だけではなく、多くの世代に違和感を与えることでより多くの注目を集めるこの手法に「ずるい!」と感じえずにはいられません。

 

 

其の二、となりのトトロのメイやサツキ、もしくはナウシカではなく強力なアイコンを持つキキを使うところがずるい!

このCMでの舞台設定は現代の横浜だそうです。

横浜に住む女子高生、キキ17才。彼女はこの街で、相棒の黒猫ジジと元気に暮らしている。同じ高校に通う幼馴染のとんぼには、淡い恋心を抱いていた。ある日、とんぼが後輩の女の子から告白されるところを、偶然にも見つけてしまう。心がざわつくキキ。

キキ 17才。

この気持ち、うまくお届けできますか?

 日清カップヌードル特設サイトより

 

 え?日本?横浜?

たしかジブリ映画の魔女の宅急便の舞台は一昔前のヨーロッパのどこかの町で、日本ではなかったと思います。

ここでまた「違和感」が出てきます。

この違和感もよくよく考えると見事なものでジブリ映画の魔女の宅急便の設定と、ある程度乖離させることでコアなジブリ映画の魔女の宅急便ファンに「あ、これは別物ですから~、決してジブリ魔女の宅急便の続編ってわけじゃないですから~」と言っているようで、妙に納得してしまう側面もあります。

日本が舞台なら同じ日本を舞台に描いた「となりのトトロ」や「千と千尋の神隠し」の方が描きやすいですし、見る側としても成長したメイやサツキ、千尋の姿を見てみたいという思いもあります。

しかし、「現代日本を舞台に高校生まで成長したキャラを全く別のテイストで描く」という点に現代日本に持ち込み可能なアイコン(象徴)を持たないメイやサツキ、千尋では対応できないのです。

その点、魔女の宅急便のキキは現代日本に持ち込み可能な強力なアイコンをたくさん持っています。

キキの持つ、強力なアイコンとは?

ここでいうアイコンはそのキャラクターが持つ象徴的な部分だと思ってください。

となりのトトロでのアイコンはトトロ、まっくろくろすけ、ネコバスなどで、それらは子供にだけ見えるものなので高校生のメイもしくはサツキと関連付けるのは難しいと思われます。

千と千尋の神隠し」でのアイコンはカオナシや湯婆婆、ハクです。

高校生のハクは見てみたいものですが、カオナシや湯婆婆はさすがに現実世界の現代日本では無理があるかと思われますし別のテイストとなるとひと目でそれとわかるデザインは難しいのかもしれません。

それにメイもサツキも千尋もそのキャラクター自身に「高校生になったら?」という設定に持ち越せるアイコンを持っていません。

 

では魔女の宅急便のキキが持つアイコンは何かと言いますと、真っ赤なリボン、ホウキ、真っ黒なワンピース、黒猫のジジなどです。

これさえそろっていれば少々キャラが違っても魔女のキキだと認識してもらえるはずです。

 

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このCMで持ち込まれたアイコンは真っ赤なリボン、ホウキ、黒猫のジジ(30秒verのみ)と、魔女のキキを連想させるには十分です。

現代日本を舞台に高校生まで成長したキャラを全く別のテイストで描く」というハードルを越えるために、メイでもサツキでも千尋でもなくキキを選んだ制作側に「ずるい!」というか「にくいよっこのー」という感情を感じえずにはいられませんでした。

 

其の三、最後の最後で若者をターゲットにしているというスタンスに引き戻すキャッチコピーがずるい!

このCMの最後はこのキャッチコピーで締められます。

 

アオハルかよ

 

「青春」と書いて「せいしゅん」と読まずに「あおはる」と読む。

「せいしゅん」はまさに若者に向けた言葉なのですが、これまでさんざん使い倒されてきて、もはや形骸化されすぎて本来の言葉の持つみずみずしさや初々しさが失われているようにも思えますし、現代の若者にとってはド直球過ぎな感もあると思います。

「アオハルかよ」 たった六文字の言葉ですが「青春」を表現するのにド直球すぎず斜に構え過ぎずに今の若者たちに届きやすい言葉で表現されているステキなコピーだと思います。

これまでさんざん「全年齢を対象にしたマーケティング」だと書いてきましたが最後のこのコピーで「メインターゲットは若者ですよ」というラッピングが上手いことされたようでこれにはくやしいというか「ずるい!」と言わざるをえません。

 

 

【最後に】

正直、ここまで書いてきたことと、このCMの制作側の思惑とはなんら関係はないと思われますが、たった15秒か30秒のCMにここまで思いをめぐらせることが出来るこのCMは個人的には素晴らしいと思いますし大好きです。

ここだけのはなし最後のキキの「えへへ、うわっ!」が可愛すぎてそこだけ何度も繰り返し見たのは内緒です。