吾妻ひでおさんの「失踪日記」と「アル中病棟(失踪日記2)」を読みました。
吾妻ひでおさんの「失踪日記」と「アル中病棟(失踪日記2)」を読みました。
最初に「アル中病棟」の方を読んだんですが面白すぎて読後に「失踪日記」の方もネットで注文して読みました。
大まかなあらすじとしては「失踪日記」の方は氏が1989年に仕事をほっぽり出して失踪後、休載期間をとり、その間に鬱と不安からの自殺念慮から人知れず山中で自殺を試みたが失敗し、そこからホームレス状態が始まるというもの。
ゴミをあさって食料を確保していたなど、ホームレスとしての生活が赤裸々に語られています。(それまで漫画家として第一線で活躍していて単行本も何冊も出している人がホームレスっていうところがすごい)
ホームレス状態からあるきっかけで配管工としての職に就くものの、そこもしばらくして辞めたのち漫画家として復活するが連続飲酒状態からアルコール依存症となり幻覚などが出始め、家族から強制的に入院させられ治療プログラムを受けることになる。(主にアル中病棟)というもの。
吾妻ひでおさんと言えば僕が小学生のころに少し思い出がありまして、作品名は忘れましたけど、その昔ギャグタッチでちょっとエッチな漫画を描かれていたんですね。
その漫画の単行本をいとこのお兄さんが持っていて、いとこの家に遊びに行ったときはそのお兄さんが留守中にこっそり部屋におじゃましてその漫画をドキドキしながら読んでいたという思い出があります。
感想にもどりますが内容としてはホームレス状態、自殺未遂、アルコール依存症と、一見すさまじく悲壮感にあふれるものになって当然なんですが氏の漫画のタッチと独特なコミカルな表現も交えつつ描かれているので、もういっそのこと楽しく読めてしまいます。
主に「アル中病棟」でのお話ですが、アルコール依存症治療のためのプログラムで病院内に半分軟禁状態にされている生活の詳細などは普通に生活している分には知りえない情報です。
そういったところをのぞき見するような面白さもありますし、アルコール依存症についての知識も漫画ならではで分かりやすく解説されています。
特に印象にのこったのが「アルコール依存症は家族の病気」ということです。
僕の身内にはいまのところアルコール依存症の家族は居ませんが、もしいたとしたら僕自身も病気ということになります。
アルコール依存症の当人は病気だとはっきり分かりますがその周りの家族がそのときに自分自身のことを病気だと自覚することができるでしょうか。
「もしかしたら自分は病気なのかもしれない・・・」そういった疑いをもつことすら難しいのではないのかと思います。
そしてなによりですが「やっぱり絵が上手い」ということがあります。
「失踪日記」2005年3月第1刷発行、「アル中病棟」が2015年10月に第1刷発行ですので1969年のデビューを考えるとキャリアは相当なもので長年漫画を描いてこられた「老練さ」というものを感じえずにはいられません。
驚くべきことは「失踪日記」よりも「アル中病棟」の方が絵が上手くなっているということです。(見る人の好みによるかもしれません)
アル中病棟執筆中はおそらく60歳を超えられてると思いますので(2018年現在御年68歳)そのお歳でなお成長を停められていないということに驚きです。
アル中病棟の巻末インタビューでも「5年前くらいからデッサン教室に通っている」なんてことも言われてますのでベテランとして胡坐をかかないその姿勢は素晴らしいと思います。
そしてもうひとつ特筆すべきところは氏の描く「女の子がかわいい」というところだと思います。
やっぱり長年かわいい女の子を描いてきただけあって女性キャラクターが魅力的です。
基本的に5頭身くらいのキャラクターがメインなんですが独特の色気というかかわいらしさを内包していると思います。
吾妻ひでおさんの現在は2017年に食道がんが判明し、入院・手術を経て闘病生活するものの現在は退院されて元気にツイートもなさっています。
「失踪日記」、「アル中病棟」をきっかけに僕の中で「吾妻ひでおブーム」が起こっており、他の作品もAmazonで注文中です。
これからも氏がお元気であり、作品を生み出し続けられることを願ってやみません。
ご覧いただいてありがとうございました。